パン取材のはずが、
なぜかこんな展開に
開発目覚ましい上総地域の中心都市、木更津市。海岸部のアウトレットモールから丘の上を造成した宅地を越え、さらに内陸部に向かうと、研究施設が集積するかずさアカデミアパークやダム、高速道の合間を縫うように、なだらかな田んぼと里の風景が車窓に映ってきます。
矢那エリアは上総の田園風景が今なお残された貴重な地域のひとつ。矢那街道沿いには長屋門付きの古い民家が佇み、米の収穫時期にガードレールに架けられた稲の風景や、落花生を乾燥させる藁ぼっちの姿は、矢那界隈の秋を伝える知られざる風物詩になっています。取材時は寒さがようやく弛み始めた4月の上旬。背後に里山を抱えた矢那の集落では、タケノコの美味しい季節を迎えていました。
ゆったりとした時間に揺蕩う、矢那の集落。
竹林を背後に抱えた地に、周りの風景に溶け込んだ一軒の小屋が丘の上に佇んでいます。
芝生の上にぽんと置かれた木の看板に導かれながら近づいていくと、ちびっこの愉しげな笑い声がパンの香りにのって訊こえてきます。今日はここ「天然酵母ぱん 紡(つむぎ)」さんの取材です。
さ、店主の星見朋子さんとの挨拶もそこそこにさっそくパンの撮影を・・・と思いきや、旦那のDAOさんと娘のあかりちゃん、そして愛犬のコテツに連れられて裏山のタケノコ狩りを体験することに。果たして取材は大丈夫なのでしょうか(笑)
裏山の竹林はびっくりするくらい綺麗に整備され、竹林を抜ける清々しい風が頬をそっと撫でていきます。山の持ち主の方が芝刈り機で下草を刈り、綺麗に維持されているのだそうです。
ちょこんと僅かに頭を覗かせているタケノコを見つけたら、準備していただいた鍬(くわ)を、えいやっと振りかざします。慣れぬ鍬づかい。なんとかタケノコを掘り起こしましたが、DAOさん曰く、
「鍬の使い方、まずまずやと思います」
と渋い評価(笑)。
一方、DAOさんは
「タケノコ用の鍬はフツーのとちゃうな~」
と漏らしつつも私とは比べようもないほどスムーズな鍬づかい。あかりちゃんと一緒に掘ることができました。