「命に触れてられるというのは、無条件に嬉しい。花だって、咲いてるのを見るだけで嬉しくなるでしょう?」
タンジョウファームキッチンのランチに添えられた菜の花を見て、4年前に取材させていただいた時の、タンジョウ農場・丹上さんの言葉を思い出した。
命を慈しむ心の延長上にキッチンがある。
野菜を無駄なく活用する。
美味しさを通じて、その有り難さを伝えていく。
それは、農や食に対する興味関心を育む。
もちろん、関心度合いの濃淡は人それぞれだろう。
だが、遠回りに見えるかもしれないが、そうやって農や食の現場と繋がっている感、つまり「当事者」が増えていくのかもしれない。
まずは、一歩から。
たまたま先日、市原市で養蜂をされている「ワンドロップファーム」を訪ねた時、代表の豊増さんは持続可能な農業を
「子どもが継ぎたいと思える農業」
だと断言されていた。タンジョウファームの岩山さんが取材時、
「大変なことはあるけれど、嬉しい、楽しい、そういう農業を」
と語っていたことと、それは重なるように思えた。
手法論によってサスティナブルを目指すというよりも、やりがいのあることは自然とサスティナブルに繋がっていくのではないか、という根源論。
キッチンの楽しげで、表情豊かな食事を味わい、そんなことを思った。
千葉県は「TOKYO」を冠したレジャー施設や落花生を除いては、その印象はどこかぼんやりとして曖昧だ。だが、風土の多様性の中に、多様な人々が暮らすその雑多さ、分かりにくさこそが千葉の魅力である。
そして当然、食も多様だ。
食べ物そのものはもちろん、届け方も様々だった。現役の行商のおばあちゃんから、移動車で表現し伝える作り手もいた。
そしてホットスポットに抗い続けて再び信頼関係を育んだ作り手の存在も忘れてはならない。
そんな多様な食の姿を編集する機会をくれた『房総カフェⅢ』という本自体にありがとうを言いたいし、本づくりに関わってくださった作り手の皆さま、そして拙著を手に取り、お店や現地に足を運んでくださった方々には本当に感謝しかない。本当にありがとうございます。おかげさまで『房総カフェⅢ それぞれの食のシーン』、完売となりました。
※最後の納品先となった「タンジョウファームキッチン」さん(千葉市)やその前日にお届けにあがった「たけおごはん」さん(匝瑳市)など、一部卸先では継続販売中です。引き続きどうぞよろしくお願いします。