カフェから、
あらたな暮らしへ
Posted on 2017.3.15
卒業式で友を見送る学生たち・・・弥生は旅立ちの季節。
今年は、カフェも旅立ちの頃なのかもしれません。
これまで、暮ラシカルデザイン編集室の本に掲載させていただいたふたつのカフェが、いずれも3月20日を最後にカフェ営業を終えます。
野田市にある「HANDER(ヘンデル)」さん。
『房総カフェⅣ 記憶の履歴書』で掲載させていただき、取材では食や環境に対する素朴で、ごく自然な疑問から、深い視座を得るきっかけをいただきました。
古い長屋型建築を改装された味のある佇まいも素敵で、閉店は惜しいところです。
私はカフェの取材店を確定しアポイントが取れた段階で、本のクオリティの7、8割はすでに決まっていると考えています。それだけに、取材店を決めることには慎重になるのですが、特に気を使うことは「未来への伸びしろがあるか」という視点です。本に掲載された以後も、カフェの歴史が続いていって、粛々と日々を重ねていってもいいし、地域にワクワクするような出来事のハブとなっていってもいい。本がきっかけになってお互い知り合い、コラボが生まれたりなんかしたら、それは編集者冥利に尽きるけど。
だから、掲載後間も無く閉店というのは、ホンネを言うとすごく残念。
でも聞けばなんとご結婚を機に、今後の家庭のことを考えて考えて、考え抜いて決断された結果とのこと。そう、未来への道はカフェだけじゃない。あらたな家庭で、前に進んでいくことも伸びしろじゃないか。お話を聞いてそう思えたのです。
だからめいっぱい新生活にエールを送ります。どうかお幸せに!!
■ヘンデル閉店のお知らせ → ●
そしてたまたま同日にカフェ営業を終えられる予定の「うつわや+カフェ 草so」さん。実は草soさんも、別のかたちで未来への道を歩もうとされていました。
店主の畑中さんご夫妻が作られているお米「プリンセスサリー」のカレーを、また食べたい!また食べたい!!とずーっと思っていたので、たまらずつい先日、鴨川市の山の尾根にある草soさんを訪ねました。
ここはほんと、いつ足を運んでもうっとりしてしまう風景。棚田が視界いっぱいに広がって、斜面を駆け抜けていく風が見えるかのよう。ここの景色が好きで、実は『房総のパンⅠ 南房総という生き方』のいちばん最後の見開きページに全面写真を掲載しています。
今年は南房総一帯、お米の収穫時に襲来した台風のため、甚大な被害がでました。ここまで広域にわたって稲が倒伏してしまうのかという・・・。畑中さんの田んぼも例外ではありませんでした。ぐちゃぐちゃになって田んぼに機械が入らずともなんとか収穫して稲。それを天日干しまでなんとかできるまでになったら、再びの嵐の襲来。お話を聞いて、なぜ今年はここまで狙い撃ちするような天候なのかと、もどかしい気持ちでいっぱいになりました。
そういう苦難の日々も美味しさの背景にはあるのだと、噛み締めながらカレーを戴きました。ほんとうに美味しい。ひと口ひと口が、愛おしいです。
そして漆の器を買い求めました。
この漆器を見た途端、手のひらにおさめたくなったんです。
両手の掌でそっと持ち上げたくなるような。
そして、ざっくりとしたテクスチャーが堅苦しくなく、
ふだんの食卓にちょうどいい。
そう思いました。
これは福井県鯖江市で活動されている、山𡶜厚夫さんの作だそうです。
今後、草soさんは、棚田での米作りをベースに、農ある暮らしを体験できるワークショップやイベント出店を通じ、農と食、器に関わる活動を展開されていく予定だそうです。さっそく4月からは「田んぼしごとの会」の企画も。ブログに最新情報が掲載されていますので、ぜひご覧いただければと思います。
■うつわや 草so ブログ → ●
春の気配が漂い始めた房総、鴨川の棚田。
風景に彩りを添える梅の花や菜の花は、新たなスタートを祝っているかのようです。
房総の暮らしは、美しく可能性と希望に満ちています。