出発前に記念撮影!
Posted on 2015.11.9
5月の新緑の頃に続いて、紅葉間近に迫ったタイマグラの民宿「フィールド・ノート」を訪ねました(※前回訪問の模様はこのエントリーの下にあります)。
八幡平でJAF騒ぎを起こしてしまっていたため、予定していた到着時刻から大幅に遅れて、辺りは真っ暗。フィールド・ノートへは、宮古市から花巻市へ早池峰山を山越えする県道25号を通ります。すれ違いが困難な狭い箇所もある沢沿いの道をやや緊張しながら進んで行くと、小さな橋で一台の車とすれ違いました。アレ、こんな時間にこんなところで?と、一瞬訝し気に思いましたが、森の住人にとっては自分の方が怪しまれるべき存在なので、あまり気にも留めませんでした。
で、いざフィールド・ノートに到着してみると『7時に戻ります』との張り紙。そう、この地は携帯電話は通じない(これが結構心地いいんです)。ので、こうした方法になるのです。中にお邪魔するといつもの薪ストーブが。
荷物を置いてから玄関の外に出ると、フリースを着ていても外気の冷たさがじわりと入り込んでいきます。背中を丸めながら街灯のない、真っ暗な世界を見渡してみます・・・・・いえ、空は真っ暗ではありませんでした。
澄みきった秋の夜空が、果てしない輝きを、幾つもいくつも浮かび上がらせていました。下界の音を吸い込んでゆく高いたかい夜空は、どこまでも賑やかなのでした。久しぶりに見た天の川・・・・・。
「星すごかったな!」
と、充幸さんが仕事(調査)から戻って来て全員集合。晩ご飯の始まりです。陽子さんは息子さんの送り迎えのために外出(それが先の貼り紙)。なんと聞けばさっき橋の辺りですれ違ったのが陽子さんの車だったのです。運転に必死で全然気が付きませんでした(笑)今、息子さんが鹿踊(ししおどり)の練習中なのだとか。岩手では一般的な郷土芸能で、最近この旧川合村の辺りでは鹿踊が復活したそうです。一度、鹿踊を見てみたいですね。
そうそう、お土産に持参した寺田本家の「香取」、充幸さんが「どぶろくの上澄みみたいだな」と感想を述べられていたのが印象的でした。これからの季節は燗にするとじわっとあったまりますな。
この日の夕食もあっちこっちに話が盛り上がって、
「あ、鹿が鳴いた」
そんな声に、日付が変わったのに気が付いて・・・。
翌朝、やや寝坊気味の8時起床。
昨晩は暗くて様子を窺うことが出来なかった庭の景色が、秋の日差しを浴びています。
フィールド・ノートの庭の紅葉の本番はこれからという感じでしたが、この先、早池峰の道を上って行くとみるみると紅葉していくのが分かりました。
その紅葉狩りの前に腹拵え。
この日も陽子さん手作りのパンが登場!紅玉入りのパンに、ワイン漬にした紅玉をヨーグルト。お好みで栗の実のペーストをつけて。紅玉と聞いただけでちょっとうきうきしちゃう(千葉ではあまりお目にかかれないので)。嬉しさと美味しさが、すっと身体にとけてゆきます。
さて、そろそろ早池峰を越えへと向かいましょう。
盛岡へ抜けるルートを再確認していると、「森の匂い」の話になって。
よくブナ林を歩いていると、土や落ち葉、そして漂う空気や木漏れ日・・・様々なものが混じり合った、ウェットでクリアーな匂いがふわんと鼻を撫でます。あの「森の匂い」が大好きなんです!と言うと、充幸さん、
「この先、あれ桂の木かな。
あま~い匂いで、楽園のよう」
とニヤリと笑います。
宿を発ち、早池峰越えの県道を上って行くと、もう車窓の風景が美しくて!
そして、とろんとした甘やかな匂いに思わず、あ、これだ!!と歓声を挙げてしまいました。それは漂うというよりも私全体を包み込むかのような、濃厚なものでした。
森の奥へと続く感動の道を、山バトに導かれながら進んでゆきました。
今回も素敵な時間をどうもありがとうございました。
春の色彩弾ける、森の向こうへ〜宮古市・タイマグラ「フィールド・ノート」。美しい暮らしぶりと、光に包まれた時を過ごす
森のそよ風に乗って舞う春の光。
エゾハルゼミの声が庭に響きます
Posted on 2015.5.22
盛岡から宮古市の沿岸部へと続く国道106号線をひたすら東へ。走行距離が長いため、途中の区界高原にある道の駅でトイレ休憩をとります(ちなみに盛岡市の中心部から宮古市の中心部までは90キロ以上あります)。道の駅入口から道路の向こうを見上げますと、霊峰・早池峰山の姿がはっきりと確認できます。今宵の宿はあの山並みの反対側、早池峰の自然に抱かれた森の中にあるのです。
国道340号線から早池峰の山越えをする道に折れ、進んでいったところが「タイマグラ」と呼ばれる地域です。この場所は何年か前までは下閉伊郡川井村でしたが、現在は合併して宮古市の一部になっています。タイマグラはアイヌ語で、「森の奥へ続く道」という意味があると云われているそうですが、ここを訪ねる度に「本当にそうだな」と思わず呟いてしまいます。
傾き始めた西日が、瑞々しい生命力に満ちた新緑の木々を輝かせ、ヤマツツジや藤の花が、彩りを添えています。澄んだ薬師川は清冽な森の空気と土の匂いの気配を、流れる水の音と、風とともに運んでいるかのようです。
薬師川に架かる橋を渡って辿り着いたのが、民宿「フィールド・ノート」。車の音を聞きつけてか、フィールド・ノートの山代陽子さんが出迎えてくれました。
フィールド・ノートは奥畑充幸さん、山代陽子さんのお二人で切り盛りされています。手作りの料理に薪をくべたストーブの匂いや薪で湧かすお風呂の暖かさ。そしてコンポストトイレなどおもしろいものもいっぱい。そしてなによりもこの素晴らしい森に囲まれている。そう思い返すと、ふらりとまた泊まりに行きたくなってしまうのです。
■フィールド・ノート
webサイト → ●
■2013年5月上旬に訪ねた時の旅の模様です↓
私的原点回帰の旅・岩手編4~タイマグラ「フィールド・ノート」で野性の回帰を~前編 → ●
私的原点回帰の旅・岩手編5~タイマグラ「フィールド・ノート」で野性の回帰を~後編 → ●
※1回目、2回目訪問時も別のブログに記事をアップしていたのですが、ブログ会社のサービス終了に伴い消えてしまいました。webはこれがあるから恐ろしい・・・。
この日は残念ながら奥畑さんはお子さんと青森方面に遠征中とのことでご不在。ですが、大船渡からいらしたお客さんとともに、賑やかな夕餉(飲み会!?)を楽しませていただきました。
まずはお茶をいただいてから先にお風呂に入ります。
このお風呂がすごいんです。充幸さんの弟さんが同じタイマグラに住まわれているのですが、なんと桶職人で、その弟さんの作られた木桶の浴槽に浸かる事ができちゃうのです。しかも熱源は薪。陽子さんが「湯加減いかがですか~」と言いながら薪の量を調整してくれる、そのやり取りがまた楽しいです。
お風呂からあがったらお楽しみの夕食です。
お客さんからの差し入れで、陸前高田市「北限のゆず研究会」の「ゆず酒」が登場。なんでも陸前高田市が柚子栽培の北限だそうで、それを元にした河口商品がいろいろあるそうです。このゆず酒は、ゆず酒のなかでも珍しい生酒だそうで、その飲み口は・・・驚くほどすっきりした味わい!甘さが残らず、すっと、香りの余韻とともに口の中で消えてゆきます。
また、陽子さんからは南部杜氏の里、石鳥谷の「酔右衛門(よえもん)』が登場。鰊漬けに陽子さんが森で採取した山椒をそえた一品は、酒のアテにぴったり。クイクイ進みます。
いや、お二人見かけによらず、お酒に強いようで(笑)
揺れる手元をなんとかして撮ったこの日最後の一枚がコレ。
南部煎餅の生地がウェットな状態になったものの上に、チーズ&サラミ、クルミ&味噌(だったかな)を載せた、斬新な一品。美味しかったので撮ったものの、由来その他は忘却の彼方・・・。
さて、一夜明け、外は見事な晴れ模様。
森の木々を横切る朝の光の、なんと美しいこと!
大船渡のお客さんは、盛岡で用事があるということで、8時頃に出発。お見送りをした後、ちょっと出遅れた朝食です(寝坊助さんですね)。
朝食を頂いた後は、おしゃべり会場を縁側へ。コーヒーを味わいながらさらに話は尽きません(笑)旅の話をしてみたり、鉱物の話をしてみたり。
ふと、陽子さんが、
「あっ、セミが鳴き始めてる!」
と耳をそばだてます。まさか、5月にセミ?と一瞬抱いた半信半疑な気持ちはすぐに消えました。うわおぉ!ほんとうにセミの声がするじゃありませんか!!「エゾハルゼミ」というセミだそうで、ジリジリした騒がしい声ではなく、新緑の爽やかさとマッチしたマイルドな声です(笑)
さらに、サプライズが!
なんと、野ウサギが庭を横切っていったのです。そのちょこんとジャンプする姿のかわいいこと。
「私がここに来て、目の前の庭を通って行くのは初めて見た!」
と陽子さんもちょっと興奮ぎみ。ただ残念だったのはあっという間のできごとで写真におさめられなかったこと。夢のような記憶として、頭の中に留めておく事にします(ちなみにクマも来たことがあるそうです)。
このフィールド・ノートの庭。見上げれば梢からぷらーんとなにやらぶら下がっている不思議なものが。それを見て陽子さん、
「これはクルミの花なんですよ」
と教えてくれました。面白い形ですね。
しかも付近にクルミの実が落ちています。それを拾って、慣れた手付きでクルミを割ってみせてくれました。こうしてクルミを食べるのは初めてのことです!コルゥンと崩れてコクのある香ばしさがふわり。なんと立体感のある味わいでしょう。
そんなこんなでお庭遊びや縁側カフェ(笑)を楽しんでいたら、なんともうお昼近く。そうしたら陽子さんに、朝ご飯の豆乳スープの余りを使ったドリアを作ってもらっちゃいました。
これまた自家製のイチゴシロップ(炭酸割り)に添えるために、庭からミントを摘んできます。
恥ずかしいながら、私はついつい仕事が面白かったりもするので、こうした暮らしの時間を削いでまでPCと向き合ったりしちゃっていたのですが、なんだか最近、こうした暮らしがもうちょっとできたらいいなぁと思うようになってきた感じがします。まぁでも、今は大きい仕事を抱えていますので、もうひと頑張り、というところでしょうか。
訪れる度に野性の気をチャージして、心身をリセットしてくれる、タイマグラの宿。陽子さん、今回も素敵なおもてなしをありがとうございました!今度は充幸さんもいらっしゃる時にお伺いしたいですね!