同志に出逢ったみたいで、嬉しくなりました〜岡山県のカフェ本
束の間のあたたかさを宿した冬の日差しが、
光の粒になって、ゆっくり湖を流れてゆきます。
バス停から広がるその風景に、
どこか瀬戸内の
ふうわりとした時間の流れが包み込んでいるかのようです。
傾いたバス停に、
使い古された待合いの椅子。
そのすべてが「旅」の中に溶け込んでいます。
岡山駅から「玉野・渋川・直島行 特急バス」(両備バス)に乗ること30分ちょっと。見石バス停で下車すると、眼前に穏やかな表情を湛えた児島湖が広がります。
JRの各駅・快速列車が乗り放題の「青春18きっぷ」とバスを使った関西の本屋さん巡り。スタートはここ、岡山県玉野市からです。目指す本屋さんのオープンまでまだ1時間近くあったので、湖を望むカフェ「nene goose cafe(ネネグースカフェ)」でクリスマスドリアを頬張ります。界隈には倉庫を改装した「Grid Kitchen」(ロフトに「31coffee」という焙煎珈琲店も入っているそうです)もあり、散策にはもってこいです。
そして、食後訪ねたのが、この本屋さんです。
古書、新刊書籍、洋書、絵本、リトルプレス、ZINEなどを扱う本屋「451BOOKS」です。web shopでも本を販売しています。
■451BOOKS
岡山県玉野市八浜町見石1607-5
webサイト → ●
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入ってまっさきに目に付くのは、空間を縦に結ぶ螺旋階段。その螺旋階段に絵本が置かれ、まるでぐるりと空間を取り囲んで踊っているかのよう。二階にあがろうとすると、絵本の妖精の楽しげな声が訊こえてきそうです。
この独特な建物は、店主の根木慶太郎さん自らが設計。元々、建築に関する講義も行っていたそうです。その後、カフェにも携わり、現在の本屋(リアル本屋+webショップ)へと至ります。根木さんのおもしろいのは、本の売買だけではなく、絵本や本を楽しむための教室や講座を行ったり、カフェや提携店舗を舞台に棚やディスプレイ用のブックディレクトもされてらっしゃるところです。
そんなお話を伺っている中で驚いたのが、
「ああ、そうだ。
この間、千葉の千城台ってとこあるでしょ?
そこのサンマルクに行って棚をコーディネートしてきたんです」
と振り返る根木さん。
なんと、はるばる千城台(=ちしろだい。千葉市若葉区の住宅地で千葉都市モノレールの終点でもあります)にあるサンマルクカフェの書棚をなんとコーディネートされたのだそう。
「サンマルクは岡山の企業ですから」
確かに、株式会社サンマルクホールディングスの本社所在地は岡山市になっていますね。
さらに注目なのは、根木さんが作られているこのフリーペーパー、『OKAYAMA CAFE, ART, BOOK GUIDE 岡山カフェ・アート・ブック案内 2014-5』。
岡山県中の個性的な本屋さんはもちろん、カフェやアートに関するお店、スポットが、MAP上に紹介されているのですが、驚くのはその情報密度。A3のペーパーの片面に、こんなにお店の情報が載っているの?と驚くほど。ただ硬派に本の紹介だけをするのではなく、カフェやアートなど、本との距離感の近いところまで紹介されているのがいい!本の愉しみに触れるきっかけ、地域の魅力を感じる、その間口が広く、「編集」の力を感ぜずにはいられません。
裏面には関西各地の書店の店主の寄稿文が掲載されています。二日後に訪ねた「レティシア書房」の小西徹さんも執筆されていましたね。
その寄稿文の中で、思わず「あっ」と声を挙げたのが、岡山市中区にある「文藝堂書店」村井省三さんが紹介している一冊の本。それが、マグロ漁船のコック長として活躍した斎藤健次さんの著書『まぐろ土佐船』(小学館刊)だったのです。なにを隠そう、私の実家のある船橋市に、斎藤さんが切り盛りする居酒屋「炊屋(かしきや)」があるのです(笑)。
場所は新京成電鉄と東葉高速鉄道の交わる北習志野エリア。東図書館の近く、住宅街の中にあるので観光客にはまず分かりません(そもそも観光で行くようなエリアではないですし)。『ぐるっと千葉』時代に取材でお邪魔しましたが、もちろん、ウリはマグロ料理。近くに自衛隊の習志野駐屯地があることから、隊員が満足できるようにと、ボリュームたっぷり。定食モノなど低価格の料理が多く、マグロのイメージとは裏腹に、たいへん庶民的なお店です。また、店主の斎藤さんが百戦錬磨の船乗りコックであるのも関わらず、びっくりするほど気さくな方なのです。
ハイ、ちょっと話がそれちゃいましたね(笑)
こちらからもいろいろお話させていただいて、本当に有り難い事に『房総カフェ』を「451BOOKS」にも置いていただけることになりました。さらに、数多くのリトルプレスに触れてきた根木さん直々に、リトルプレスを扱う本屋さんや、小出版の流通についても教えて頂きました。そして、
「岡山でも同じように、カフェ本を作られた方がいますよ」
と、2階の書棚から、2冊の本を持って来て頂きました。ひとつが『おかやまカフェ案内』(鈴木トオル著 ソウルノート)。旅情を掻き立てるような美しい写真とともに、岡山のカフェシーンが切り取られていました。
そしてもうひとつがこちら。
『nanの岡山カフェデイズ』(写真・文 難波絵美子)
『カフェに行くのはそこが好きだから。
だれかと会える。いろいろな人がいる。
反対にひとりになれる。自分だけの時間がもてる。
そんな希望をかなえてくれます。
また、本来の目的どおり、その店でないと味わえないスィーツがあったり、
いつ訪ねてもぶれのない珈琲の味わいがあったり、
シンプルな幸せがそこにはあります。』
出版社勤務時代から、そんなカフェの魅力を伝える本を、いつか自分の力で作ってみたいという夢を持っていたと、あとがきに書かれていますが、いやぁぁ・・・あまりにも自分のこれまでとオーバラップして、ついつい買ってしまいました。『カフェが好きすぎて、本作っちゃいました。』という帯・・・こういう、純粋な熱量が込められた本って、どれだけ今身近にあるんだろうと、思わず考えさせられるのです。
なお、著者の難波さんはブログにて岡山のカフェ情報をUPされています。この掲載軒数もすごいですね。「カフェ協定」でも結んで、いつかお互いの地域のカフェの情報交換をしたり、取材しあう、みたいなことができると愉しいでしょうね(笑)
■nanの岡山カフェ案内 → ●
根木さん、改めて素敵な出会いを、ありがとうございました!