2014年9月、笑顔の集う空間ができました。日本の、バランスのとれた佳き食事を戴く事のできるカフェです。美味しさの再発見をどうぞ
コーヒーブレイクの後、
さぁそろそろ帰ろうと、
会計を済ませて視線をレジからずらした時、
ふとショップカードやフライヤーが目に留まる。
お店や生産者、クリエイターと結ばれていることを
小さな紙が静かに伝えている。
カフェを訪ねる度に感じること。
空間や時の流れ、食、そして人。そうした幾つもあるカフェの魅力のひとつに、「カフェからの繋がり」・・・「ご縁」といってもいいのかもしれませんが、そういう横の繋がりを挙げることができます。それが発展してマルシェが催されたり、地域内のフリーペーパーが創刊されたり。房総のカフェもその例外ではありません。むしろ積極的にご縁で結ばれている地域、といってもいいのかもしれません。
先日、『房総カフェ』で掲載させていただいた千葉市の㸿橋(こてはし)団地の近くにある「iijima coffee」を知ったきっかけが、那須塩原市黒磯の「SHOZO」で頂いたショップカードだったことはFBで綴りましたが、今度はiijimaさんのお店で頂いたショップカードで、素敵なお店に巡り逢うことができました。
「朝の5時から仕込みを始めるんです。
お店が休みの日も昼には仕込みを始めなくちゃならないので、
iijimaさんはいつもモーニング。
あそこ、7時からやってるでしょ。
だから朝なら行けるのよ。
私たちは食事は和食で、
特別なものは特に食べたいとは思わないんだけど、
本当にたまに違うものを、って食べるのが
iijimaさんのフォカッチャ」
そう語るのは、関谷一恵さん。
昨年9月に四街道市にオープンした「てまめや」を、ご主人の浩通さんとともに切り盛りされています。
四街道駅からほど近く。大通りから一本入った筋、周りの家並みに溶け込むように「てまめや」があります。
■てまめや
四街道市四街道3-12-6
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元々住んでいた家を改装し、壁面やトイレまわりの小部屋など、一部を浩通さんがセルフビルド。入口やカウンターの上には古い梁が活かされていて落ち着きある雰囲気を醸し出しています。一恵さんは「てまめや」をオープンする前は「リトルベリー」という雑貨店を営まれていたそうで、店内にはアンティークの皿や琺瑯のカップなどが並ぶ雑貨コーナーがあります(琺瑯カップへの名前入れもできるそうです)。個人的には古い秤がすごく気になりました。お店で使っている国産のクルミや、新潟県村上市で製塩している塩の販売などもあります。
「ある日、一人の女性が食べに来てくれたんです。
昔、雑貨屋に来てくれていた子で、
当時小学生だった女の子。
高校生になってた。
その子が親御さんにこんなカフェに行った、って言ったみたいで。
今、そのお母さんがよく来てくれています」
と振り返りながら一恵さんは微笑みます。
「てまめや」は、無農薬野菜やことこと煮た豆、自家製(!)の豆腐などで、ちょっとずつ、いろいろな種類のおばんざい(おかず、総菜)を、釜飯とともに味わうことのできる「おばんざいカフェ」。もちろん出汁をひくのもお手製(鰹節削りまで!)。うま味の染み込んだ大根の上には、ちょこんとやはり自家製のクルミ味噌が。仄かな甘しょっぱい風味を漂わせます。
そして何といっても釜飯です。
お焦げが、もうたまりません(笑)
結構ボリュームがありましたが、ぺろりと食べてしまいました。釜飯はお米の浸水時間が足りないと固くなるそうで、待ち時間も踏まえ、事前予約された方がいいとのこと。この日はたまたま準備があったので、美味しいご飯を堪能することができたんです。
食後に黒蜜がけのコーヒーゼリー(これが意外にイケる)、とともにセルフサービスのコーヒーを戴きます。夫婦で切り盛りされ、手が回らないのでセルフではありますが、なんと、四街道の「たべいコーヒー」の珈琲豆をドリップされたものです。セルフだからといって侮れませんよ(笑)
コーヒーを味わっていると、小上がりで、女性グループがサンキャッチャーづくりの教室が開かれていました。「てまめや」では、お店の一部を開放して、チョークアート教室やグラスペイント講座が行なわれているのです。
「この場所は、主人の実家なんです。
この家では昔、竃に薪をくべて料理を作っていた。
その記憶が私たちの中に今でもあるんですね。
だから、私たちの暮らしをそのままお出しできたらいいねって」
当初はペンションでやりたい、という夢を持たれていたそうですが、気が付けば四街道のこの場所で、たくさんの笑顔が集い始めました。その笑顔に寄り添うように、関谷さんの日常の食事がある。それは、思い出の味と、家族のようなあたたかな優しさに包まれています。