掌におさまる海鼠釉の器に一目惚れしてしまいました〜出雲窯元めぐり[1]松江市玉造温泉「湯町窯」

 民藝の流れを汲む出雲の窯元は

このエッグベーカーが有名です

左が今回購入させていただいた海鼠釉のカップ。黄釉とともに、布志名焼の窯元のひとつ「湯町窯」を代表する「色」です。右は工房に並ぶ「スリップウェア」による陶板の数々。スリップウェアはバーナード・リーチが布志名焼を訪ねた時に指導した技法で、濡れた化粧土の表面をスポイトで模様を描き、ガレナ釉と呼ばれる鉛釉を掛け焼き上げます
左が今回購入させていただいた海鼠釉のカップ。黄釉とともに、布志名焼の窯元のひとつ「湯町窯」を代表する「色」です。右は工房に並ぶ「スリップウェア」による陶板の数々。スリップウェアはバーナード・リーチが布志名焼を訪ねた時に指導した技法で、濡れた化粧土の表面をスポイトで模様を描き、ガレナ釉と呼ばれる鉛釉を掛け焼き上げます

 先月、島根県を旅したなかで、いわゆる民藝の流れを汲む窯元を二箇所訪ねました。布志名焼(ふじなやき)の窯元ひとつ、松江市の「湯町窯」と、三年前にも訪ねた出雲市の「出西窯」(しゅっさいがま)です。


今年の4月より、勝浦市市野川地区の古民家に移り住んでから、有り難いことに訪ねて来ていただける方が多くなり、お茶に出すための揃いの器が欲しいなと思っていたところでした。


そこで、旅の一日目に訪問したのが、出雲の名湯・玉造温泉のほど近くにある「湯町窯」です。

JR玉造温泉駅からすぐのところ。閑静な通り沿いに湯町窯があります
JR玉造温泉駅からすぐのところ。閑静な通り沿いに湯町窯があります

山陰地方の窯元には柳宗悦をはじめ、河井寛次郎、濱田庄司、バーナード・リーチら、民藝運動の先駆者たちが、度々足を運び指導を行なってきました。大正11年に開窯したこの湯町窯は、バーナード・リーチの影響を特に受けられた窯で、卵焼きを作るエッグベーカーはその象徴といえます。

器のハンドル付けもバーナード・リーチが指導した技術のひとつです
器のハンドル付けもバーナード・リーチが指導した技術のひとつです
豊かな配色ながら、落ち着いた佇まいのスリップウェア模様のカップ。ワインも似合いそうです
豊かな配色ながら、落ち着いた佇まいのスリップウェア模様のカップ。ワインも似合いそうです

店内の様子。日常空間に違和感なく民藝の器が溶け込んでいます
店内の様子。日常空間に違和感なく民藝の器が溶け込んでいます
神棚の御酒口にも海鼠釉の器が使われていました
神棚の御酒口にも海鼠釉の器が使われていました

お断りさせていただいたうえで工房内の写真を撮らせていただきました
お断りさせていただいたうえで工房内の写真を撮らせていただきました

 今回、迷いに迷って(欲しくなる器が多くて苦労しました・笑)選んだのは下のカップです。私の大好きな海鼠釉の器です。

コーヒーにも、緑茶にも馴染んでくれます
コーヒーにも、緑茶にも馴染んでくれます

 八面にしのぎを施され、素朴ながらもモダンな風情を漂わせています。縁は少し外側に反りでた丸みを帯びているのですが、これがたいへん口あたりがよく、また液垂れしにくく、使いはじめてすぐさまお気に入りとなりました。4脚買い求めましたが、2脚ずつ重ねて収納できるのも魅力的です。


今、古民家にいさんちでお茶をお振る舞いする時は基本、この器を使用しています。今度、この器に出逢う機会がございましたら、ぜひ手のひらへのおさまり具合、唇と器のあたる感触を、じっくりと体感していただければと思います。


では、翌日は出西窯を訪ねます。