『月刊ぐるっと千葉』8月号のいっぴんさんは、いすみ市で自給自足の暮らしを送られている「R工房」さんを訪ねました
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今回のいっぴんさんは、いすみ市「R工房」の佐野洋夫さん、隆子さんご夫妻が炭火で焙煎して作られている「麦茶」です。
先月まで、古民家・にいさんちを訪ねてきてくれた方に、この麦茶を「ストロー付」で振る舞わせていただきました。麦茶のすっきりとした香ばしさと、この麦の棹のストローに、みなさん狙い通り(笑)歓声を挙げてくれました。
ご夫妻が手掛ける、大麦の栽培から収穫、乾燥、脱穀、そして焙煎に至るまでの過程は、ぜひ本誌をご覧ください。
元々、松戸市で暮らしていたという佐野さん。
木工を手掛けていた佐野さんは、「彫工をやりたかったの。山の中に彫刻を飾ったりして(笑)」と、移住を決意。それから20年以上の月日が流れ、彫刻や家具だけではなく、気が付けば家まで自身の手で作るようになっていました。
さらに、食においても自給自足の生活を送っています。その食の自給自足のあり方が、自らの手に宿る手仕事の技術とリンクしているところがご夫妻の面白いところです。
「木工屋だから端材がいっぱい出るの。
それで炭焼きを始めたのね。
すると、粉炭ができる。
この粉炭で作物がよく育つのね。
それで農業をやってみようかと」
と語る洋夫さん。杣人(そまびと)と知り合い木に切り方を教わって、自己流で炭焼きを始めました。その炭を使って作る堆肥がいっぱいできたことと、近くで友人が田んぼをやっていたことが、農の世界にのめり込むきっかけになったそうです。
炭焼きは、
「1日目は燃して、2日目は蒸し焼き。
竹炭は難しい。節を残しちゃだめ。
縦に割って密にして入れる。
水の浄化に使ったり、
炭は麦茶を煎るのに使ったり。
粉炭と焼き土と堆肥を混ぜて、苗の培土にもします」
と、作った炭は様々な用途に活用します。
一方、田畠に目を向けてみます。
R工房では除草剤などは一切使用しません。
「うちの草は虫のフンや枯れた草で堆肥になる。
循環しているんです」
そのため、草刈りが必要になりますが、草刈りに入って、田畠の
「様子を見る」
ことが大切だと洋夫さんはいいます。
「農業は観察して楽しむ」
のであると。
ウドは手がかからないので使っていなかった土地に植える、
ポップコーンは虫が実に入ってても炒る時に虫がはねるので大丈夫、
菜種の油かすは肥料に、
在来の昔いちごの畑では、雨跳ねを防ぎ、またマルチの役割として麦藁を敷く・・・
様々な資源がリンクし合う姿、
ご夫妻のおっしゃる
「自然のものを使い切る“今昔農法”」
が、そこここに溢れているのです。
洋夫さんは
「色々な作物を作って、絡めて、総合的なものをやっていければ。遊び感覚かな。その方が長続きするよね。もっと心を充実させないとって思うのね」
と強調されます。そして、隆子さんがこう続けます、
「自分の身体を作っている食に、手間をかけられますから」
・・・・・
「時間がもっと欲しくなるのが難点かな」
と笑うご夫妻。その笑顔には、地に足のついた豊かさが滲み出ているのです。