NAOZO→WHITE NOTE→SHOZO。杜の風に誘われて、次なる旅へ

 

那須の朝

木漏れ日に揺蕩う薪の匂いに誘われて

仮眠から目覚めると、木々に囲まれた道の駅明治の森・黒磯はきらきらとした朝の光の中に。遊歩道で犬の散歩をする年配のご夫婦や、農産物直売所で野菜の苗を品定めするおばちゃんたちが、早くも道の駅の賑わいを演出しています。そんないきいきとした姿に背中を押されるかのように、那須岳の方角へ車を走らせます。

 

杜の中の道を駆け抜けていると、木々をすり抜けてきた光の粒が、心の澱みをすぅーと、清らかにして弾けていくかのよう。4月は暮らし、仕事ともに変化が激しく、ようやくひと段落した時には突き動かされるように深夜の国道4号をひたすら北上していたのでした。杜に抱かれたその場所で、ただゆっくり過ごすために。そんなカフェを目指して。

杜のと杜の間に時折覗く暮らしの佇まい。「美しい春の風景をありがとう」、手作業で田植えをするおばあちゃんへ
杜のと杜の間に時折覗く暮らしの佇まい。「美しい春の風景をありがとう」、手作業で田植えをするおばあちゃんへ

朝食は木漏れ日の向こうにありました。


「NAOZO」さん。

石釜パンのお店です。

すでにテラス席ではご家族がパンを囲みながらにこにこと談笑中。期待に胸を膨らませながら玄関脇に積まれた薪を横目に扉を開けます。すると、記憶を掘り起こされるような懐かしい匂いに身体が包まれ、思わずはっと店内を見渡してしまいました。

お店で販売しているパンはテーブル席で味わうことができます。

 

くるみがちょこんと顔をのぞかせるライブレッドが朝食によさそうと思い、こちらを食べて行きます、と告げた瞬間、アップルバタータルトの凛とした表情に心奪われてしまいました。こちらも・・・と、思わず追加でタルトを注文してしまいました。

 

ライブレッドをスライスしてもらっていると、焼き上がったばかりのチーズタルトが、とろりとした香りとともにカウンターに置かれます。帰り際に買って帰ろう、そう思い朝食の済んだあと再びカウンターへゆくと、すでに別の人たちのおいしいひと時を演出するために旅立っていました。ここではパンとの出逢いも一期一会、なのかもしれません。

 

スライスして温めてもらったライブレッドをコーヒーの香りとともに席までお持ちいただきました。よく見ると半分は袋に入れられています。タルトを追加したのふまえて、半分をお持ち帰り用にしていただいたのです。細やかな配慮に、嬉しさがこみあげてくるのが分かりました。

 

ふんわりと降りそそぐ木漏れ日、撫でるような杜のそよ風、そして薪の匂いに包まれて。すべてがNAOZOさんのご馳走でした。

ほのかな酸味がふっと広がるライブレッド。生地はしっとりと柔らかな弾力
ほのかな酸味がふっと広がるライブレッド。生地はしっとりと柔らかな弾力
アップルバタータルトをフォークでさくりと切り分けて口に頬張れば、ほろ苦でビターな香りにしっとりとした甘さが
アップルバタータルトをフォークでさくりと切り分けて口に頬張れば、ほろ苦でビターな香りにしっとりとした甘さが

那珂川に架かる那須高原大橋を車で駆け抜けると、まるで視覚で山の匂いが感じられるかのような山肌を魅せる那須連山が車窓いちめんに広がります。そこから程なく、その雄大な山並みを望む、真白な道具箱のようなお店へ。

 

生活道具店「WHITE NOTE」さんです。

ちょうど、市野川の古民家で新生活を始めたばかり。ちょっと覗いてみることにしましょう。


陶器のうつわやキャンドル、明かりや家具に至るまで、暮らしをより愉しむためのアイテムがセレクトされているほか、ご主人が自作されている木製カトラリー「Horu」シリーズや、奥さまが手掛ける麻紐バッグ「Amu」シリーズが並びます。

 

東南アジアで作られたという硝子のランプシェードに惹かれましたが、ここはぐっと堪えてHoruシリーズのジャムべらを購入。ミニサイズのジャムの瓶に対応する匙がうちになかったので、これはいい出逢いでした。

益子のコミュニティカフェスペース「ヒジノワ」で購入した谷島さんの陶小物をジャムべら立てに
益子のコミュニティカフェスペース「ヒジノワ」で購入した谷島さんの陶小物をジャムべら立てに

そして、あのカフェへ。


SHOZO」さんは、旅をするきっかけとなるようなカフェ。昨年のお盆以来の訪問、今度は春という爽やかな季節に伺うことができました。

 

今日は「山SHOZO」こと「NASU SHOZO CAFE」へ。そこは高い木立のなか、柔らかな光の降り注ぐ場所。

カップルや子ども連れ、おばさんたちのグループから外国の方まで。いろんな人たちがにこにこしてる。みんなの幸せに囲まれながら、持ってきた一冊の本のページを、ゆっくりとめくっていこう。

 

と、その前に腹ごなしから(笑)

森のブレンドは風に抱かれるような軽やかなコク。ゆっくり木々の合間を吹き抜けるように。トーストセットはピザ風のテイスト。酸味と辛さのバランスが絶妙です、このマスタード。

「撮影してもいいですか?」「音をたてないようにして頂ければ」…SHOZOさんでは一眼レフではなくipadで撮影させて頂きました
「撮影してもいいですか?」「音をたてないようにして頂ければ」…SHOZOさんでは一眼レフではなくipadで撮影させて頂きました
アイスストロング珈琲。キレのあるクリアーな苦み。香りがツゥーっと頭のてっぺんから抜けていきます。ストレートを味わったらシロップをたっぷり入れて。
アイスストロング珈琲。キレのあるクリアーな苦み。香りがツゥーっと頭のてっぺんから抜けていきます。ストレートを味わったらシロップをたっぷり入れて。

食後はアイスコーヒーをお供に、読書の世界へ。

じっくり読もうと思って一冊うちから持って来たのだけれど、SHOZOさんのお店にある本が面白くって、ついついそっちの方に夢中に。まぁ、それもいいか。

 

杜の風とともに甘やかな昼下がりを過ごします。

そして、ここで一枚のゲストハウスのチラシに出逢いました。旅に程よいスパイスがこうして加わることになります。


午後のひと時を過ごしたら、名湯・鹿の湯で身体の芯からリセットします。いつ訪ねても癒されるすばらしい湯です。房総ではすでに散ってしまった桜も、標高の高い温泉の辺りは、まだ見頃を迎えていました。


そして、やっぱり足を運んで運んでしまいました。黒磯駅寄りにある、町のSHOZO「1988 CAFE SHOZO」。なんでだろう、訪ねるたびに「ああ、また来れたんだ!」と弾む心を抑えきれない自分がいるんです。

 

やっぱり今日もスコーンセットを頼んでいました。

鞄の中には山のSHOZOで買い求めたテイクアウト用のスコーンと、NAOZOさんのスコーンが詰まっているのに(笑)

たっぷりのホイップとジャムをつけて。暮れゆく町の景色を噛み締めながら
たっぷりのホイップとジャムをつけて。暮れゆく町の景色を噛み締めながら

どうしてSHOZOさんのスタッフのみなさんは、こんなにきびきび、気持ちのいい立ち振る舞いなのだろう。会計時に改めてそう思いながら、整然と並べられたショップカードやフライヤーを眺めていると、5月末にDIC川村記念美術館で行われる「アート&クラフトフェア チバ にわのわ」のフライヤーが置かれているのに気が付きました。

 

いやぁ、嬉しいな。実は自分、千葉から来たんです。千葉の情報が、黒磯にもあるんですね・・・・・そう伝えると、女性スタッフの方が、

 

「もうひとつ、あるんです」

 

と、嬉しそうにショップカードを手渡してくれたのです。このいち枚のカードが、新たなカフェとの出逢いとなるのです。