「大坊珈琲店」 in 焙煎香房・抱(HUG)
カッコよくて、気さくで、チャーミングな大坊さんに魅了されました
房総半島内陸の城下町、大多喜町の里山にある自家焙煎珈琲の「焙煎香房・抱(HUG)」のwebサイト上に、ある日、ふとこんなお知らせがアップされました。
「大坊珈琲のひととき」
昨年末、惜しまれつつ38年の営業を終了した南青山の大坊珈琲店。私も何度も通いました。その馥郁たる深煎り珈琲は飲む人の心を一瞬で魅了し、味わいを記憶に刻みつけます。
閉店後の大坊さんはドリップの伝道師としてそこかしこで珈琲を点て、以前にも増して精力的に活動されています。
このたび、その大坊さんとのささやかなご縁のもと、当店での「大坊珈琲のひととき」実現の運びとなりました。わずかな時間ではありますが、この機会にぜひ足をお運びいただき、大坊珈琲の香りと味わいをお楽しみいただけたら幸いです。
僅か数時間の「大坊珈琲店」が、抱さんにオープンする。青山の街中にあったあの大坊さんが、ここ房総の里山で珈琲を淹れる・・・・・一体どんな化学反応が起こるのだろうと思うだけで、胸が躍ります。雨上がりの午後、さっそく、抱さんの中の「大坊珈琲店」を訪ねました。すると、いつにない賑わいの奥で、ポットから注がれる湯と、ネルに入れられた珈琲の接点を見つめる一人の男性が・・・。
注文するのも忘れてその、大坊勝次さんの流れるような動きに見入ってしまいました。抱の水野さんが、
「手付きや所作が美しい、これは何だ!?と思った。
焙煎は一人で一から十までできると思ってたけど、
『十』を超えていた」
と、衝撃を受けたその人。その佇まい。水野さんは「何がおいしいかという軸を決めてくれた」と振り返ります。
私も実は一度だけ学生の頃、青山の大坊珈琲店に足を運んでいます。ですが、恥ずかしいながら、当時の私は喫茶店というものにまったく場慣れしてなく、あの空間に入っただけで緊張し、頭が真っ白に。その貴重な一杯も、記憶が定かではないのです。
だから、今日は満を持して「4番」を、戴きます。
・・・・・ああ、ほんとうだ。
口の中に残らない、雑味など皆無。
香りに、軽やかさと、確かな存在感が同居している。
喉を通り抜けて行った後の、
一点の甘さに酔うと、
雨上がりの里山の清冽な空気が辺りで輝いていました。
大坊さんの著書、「大坊珈琲店」(誠文堂新光社)に、焙煎についての記述があります。一部を見てみると・・・
『コロンビア・スプレモを6.9~6.85に焼きますと、苦みがまだ強くならないところ、酸味がほとんど消えて気配程度に残っているところ、ここに柔らかい甘みが出てきます』
『エチオピア・イリガチェフェは6.85~6.8に焼きますと、苦みが全く無いとは言いませんが、弱い、少ないところ、酸味が存在を主張せずに甘みに包まれるように存在するところ、ここに甘みが陽炎のように淡く暖かく出てきます』
『苦みがあっても口にきつくならない、酸味があっても口に残らないポイントは6.8~6.9の間にあり、その範囲からはみ出さないようにローストするということです。その中でそれぞれの種類の豆の甘みの表情を焼き分けたいと思っています』
陽炎のような甘さ・・・・・その響きだけで酔いしれてしまいそうです。
ところで、私が各地の自家焙煎珈琲店で豆を購入する時、「甘みの感じる珈琲豆をください」とお願いすることが多いのですが、お店さんによってはたまに「ん?」というような顔をされることがあり、「苦み」「酸味」「コク」という表現や、「ナッツのような」「果実のような」といった、具体的な要望をしないといけないかなと、ふと迷うことがあります。
そこで大坊さんに、(ほんとうに僭越ながら!)珈琲の甘みとは、どういうものなのかを尋ねてみました。すると驚いたことに
「甘みというのは科学的には、珈琲にはないそうなんです」
とのお答え。しかしながら、
「香りが甘みと感じられるんじゃないでしょうか」
とおっしゃりつつ、
「酸味がこうきて、なくなるポイントがある」
と、山を宙に二つ描く大坊さん。
苦みについても同じ山を二つ、描かれます。
「この、なくなったポイントが重なり合った時、
甘みを感じるんじゃないでしょうか」
その「谷」の甘さは、深煎りだけではなく、
「もっと浅煎りでもそれは出せると思う」
「趣味でやられている方で、
私の元に豆を送って来てくれる方がいるんですがね。
甘さを感じることがあります」
・・・・・この日の一杯、大切な記憶として焼き付けたいと思います。
そして何よりも、大坊さんの気さくなお人柄に魅了されてしまいました。
「ここは2回目なんです。
まちに下りるところ、いい風景でしたね。
こうすごく曲がるところ。
ここは盆地なんですか?」
ああ、国道297号の難所、七曲がりですね!
市原から大多喜へ入る時、連続する急カーブを経ながら一気に下って行きます。そのとき、なだらかな山並みのなかにある、田園のなかにあるまちの様子を窺うことができるのです。房総内陸、ならではの風景。そこを大坊さんに見て頂けたのが、とても嬉しい。
さらに勝浦市にも以前お越しいただいていました。
「カツオを一匹買いました。
白い砂浜があるでしょう?」
私が秋田に住んでいたと言えば、北東北に行った旅の話をしていただきました。魅せて頂いた大坊さんの笑顔がどこまでもチャーミングで、清々しい気持ちになりました。
そして最後に記念撮影を撮らせて頂きました。
光のように眩い、美しいひととき。
大坊さん、そして抱のみなさま、本当に素敵な時間をありがとうございました。
アインシュペナーとアイリッシュコーヒーを間違えて赤面(笑)大多喜の里山にある「焙煎香房・抱(HUG)」は連休限定でウィーンな装いに!
Posted on 2014.3.23
今日は引っ越しにあたって勝浦市内のマニアックな金物屋、食器店でお宝ハンティングをした後、市野川のにいさんちで音楽家ご一行をお出迎え。ランプシェードの取り付けもやってほっと一息ついたらもう日暮れ時です。
おっと、こりゃまずい。
珈琲豆を切らしたので「焙煎香房・抱(HUG)」さんにいかなきゃと思っていたところでしたので、慌てて大多喜町へと車を走らせました。さすが海辺の勝浦駅裏の現住居よりも、市野川からだと感覚的にかなり短い時間で大多喜に出られます。この感覚が当たり前になるのももうすぐですね。
道の駅たけゆらの里大多喜を過ぎ、キュッと曲がって田んぼの脇道へ入ります。ここから見る田園風景が私のお気に入りのひとつ(これは裏道で、普通はゆば喜近くの信号のある交差点からアプローチします。分りづらいので裏道は初心者にはおすすめしていません・笑)。その里山の情景の向こうに、古民家と、古い納屋を改装したカフェ空間が待っています。国道からお店へと至る小道も、抱さんを訪ねるひとつの魅力かもしれません。
今日は「グァテマラ・フライハーネス」を200グラム購入しました。前回は甘やかな風味がお気に入りだった「ケニア・ニエリ」を味わいましたので、比較してどんな風味なのか楽しみです。
さて、三連休中の抱さん、「アインシュペナーとウィーン菓子」という企画を開催中です。以前そんなウィーン企画をやると店主の水野さんから伺っていたので思わず、アイリッシュコーヒーがあるんですよね!張り切って言ってしまいました。
「おいおい、そりゃ国が違うよ!」
・・・そりゃそうですよね、いやお恥ずかしい(笑)
連休中は店内でBGMにクラシックが流され、スイーツに珍しいウィーン菓子が登場します(本場の以前、オーストラリア人が来店された際、「これだよこれ!」と唸ったそう・笑。キュイッソンさん、すごい!)。中にケシの実が入っているという「モーントルテ」とともに、アインシュベナーを注文しました。
このアインシュペナー、グラスに半分くらいも生クリームが盛られています。なんという迫力でしょう。
「こうクッと飲んで、鼻にちょこんとクリームをつけちゃう」
と、ウィーンやアインシュペナーの話になると水野さん嬉しそう(笑)ウィーンが本当に大好きなんですね。私も一度訪ねてみたいです。
さっそく戴いてみます。
ほわんとした口当たりとまあるく軽やかな甘みに、温かなコーヒーがまろやかに口の中で広がっていきます。モーントルテはケシのプチプチとした食感が面白い。アインシュペナーの生クリームをちょこんとつけて食べてもおいしいです。ああ、なんとリッチな気分にさせてくれるおやつタイムでしょう。これから移住にあたっての携帯やデータ通信契約の更新作業をしなければならないことを、しばらくの間忘れさせてくれました(笑)やっぱり、緩急のメリハリが大事ですね。こういう癒される時間があると逆にシャキッとした気分になれます。
さて、23日(日)は鵜原理想郷で久々のツアーがあります。山ゆりの会の方が、勝浦市随一の景勝地「鵜原理想郷」をガイドしてくれます。これは時間をやりくりしてぜひ参加してみたいですね!(海辺の鳥居に9時集合だそうです)