時を経て宿り続ける見えない使い手の想いは、いま、現在の想いをも結び合わせる〜市原市「上総国分寺骨董市」で交換されているのはお金だけじゃありませんでした

 

想いを受け継ぐその柔らかな光。

再び暮らしを照らす時を待っています

 

「上総国分寺骨董市」

 毎月第4日曜日

 8時頃~14時頃

 

 

間もなく年度末、新生活の季節です。

新たな暮らしに必要なもの。

そこに、巡り巡ってきた古いものを取り入れてみるののはいかがでしょう。

 

ようやく春めいてきた日の日曜日。

千葉市以南では最も盛んな骨董市という噂を耳にして、市原市で定例開催されている「上総国分寺骨董市」を訪ねました。かつての上総國の国分寺というだけあり、厳かな雰囲気が漂います。

 

その雰囲気を和らげるかのように、賑わいが溢れます。

この日は駐車スペースがいっぱいになるほどの人出だったそうです。

骨董市ということで皿や猪口、壷のほか、古銭やプラモデル、前掛け、箒(ほうき)、ちゃぶ台、農具など、生活雑器から仕事道具、趣味の品まで、様々な物が境内に並んでいます。早春らしく、蕗の薹(ふきのとう)を売る姿も見られました。

 

まず興味をそそられたのが古布を扱うこちらのお店。親子でお店をやられているのでしょうか。若い娘さんと思われる方は古布をリメイクした着物や、お雛様飾りを作られています。親御さんらしきご夫妻は古布を山積みにして販売されています。古布も様々で、半纏に使われていた布や、各地の縮など、織り方や年代など、様々です。同じ藍染めの布でも、江戸時代のものになると、ぐっと落ち着いた風合いになります。ただ、お値段もいいお値段になりますから(笑)、お店のおじさんは

 

「これ(江戸時代の古布)全部でリメイクするんじゃなく、

 バッグとか着物のアクセントに使う人が多いよ」

 

と教えてくれました。

 

さらに境内の奥の方へ進むとお姉さんの切り盛りする露店で、今、欲しくてしょうがないちゃぶ台があるのに気が付きました。これは!と思い物色しましたが、イメージしていた風合いと異なっていたため、ここはぐっと堪えて購入するのを我慢します。

 

ところがここの露店が実にユニークな商品を扱っているのです。なんと、ちゃぶ台の上には和文タイプライターが鎮座していました。これがあればレトロな印字ができるかも・・・連れて帰りたい!と思いましたが、残念ながらインクリボンに文字盤を打ち付ける部品が壊れているのと、文字盤と表示ラベルの一致しない暗号用のタイプと判明し、これも購入を見送りました。ただ、一生懸命悩んでいた姿がお姉さんに響いたのか、文机をプライスダウンしてくれました。畳の部屋に似合う文机をお買い上げ、です。戦後間のない頃につくられた机らしい、とのことです。

 

さらに境内の奥へゆくと、ミルクガラスのランプシェードを並べるお店に出逢いました。実は私、ちゃぶ台だけではなく、照明器具を探し歩いているのであります。この露店からはお宝の匂いがふわんと漂っております。よく見れば琺瑯のランプシェードも潜んでいました。

 

ここの露店のおじちゃんがまたユニーク。長南町などの古文書を見せてくれながら、

 

「最初は愛着があるけど、

 一度書かれている内容を解読したら満足しちゃうんだよね。

 そうしたら売っちゃうの」

 

といたずらっ子の様に笑うおじちゃん。段ボールの中からは、

 

「これは男女の秘め事を書いた古文書だ・・・」

 

とニヤリ。と、思えばポケットから馬券を取り出し、

 

「今日はこれが楽しみだ」

 

と、またニヤリ。この世の辛い事など感じさせない、おじちゃんの表情に、思わずこちらも笑みがこぼれます。ランプシェードは大正時代だろうというフリル型のミルクガラスに一目惚れ。通常のスラリとしたシェードに比べると骨董価値が格段に上がるそうです。また、このシェードの端はオレンジ色をしていますが、別の色だともっと高価なのだそう。実に奥の深い世界です。

 

さて、どうしようか・・・。前回、印西の木下骨董市の経験を踏まえ、フリル型でないシャープなシェード(ソケットの下部のパーツが鉄素材で、これも価値あるものなのだそうです)を加え2点購入することで値下げ交渉、結構プライスダウンしてくれました。おじちゃん、ありがとう!

 

ふと、周りをみると、おじちゃんの露店に先ほどのお姉さんをはじめ、若い出店者さんたちが集まり、おじちゃんとのおしゃべりを楽しみにしているではありませんか。そう、おじちゃんは若き出店者さんたちを、様々な面でサポートしている頼れるオヤジだったのです。

 

「若い人育てないとね。

 おじさんがお世話しないと。

 馬券が的中したら焼肉おごってやっから。

 ただのエロオヤジじゃないからよ!」

 

と、再び笑いが溢れます。

別の女性はおじちゃんに、

 

「今度、古物商の許可を取ります!」

 

と報告。その目は輝いています。

普段、食べ物がメインの勝浦朝市で人と人とのコミュニケーションのあり方に触れていますが、「モノ」というマーケット、市(イチ)でも、こんなにも和やかで素敵な人の繋がりができるのだなぁと、感ぜずにはいられませんでした。

 

積み重ねられた時を宿したモノたちに込められた、見えない想いと、

出店者さん、そして出会いを求めてやってきた来訪者の想いが交換される市。

想いを「遣る」市・・・・・

おじちゃんの姿を見ると、

それが「思いやり」なのかもしれないなと、改めて思うのです。

 

国分寺骨董市と、おじちゃんの心意気を大事に、

購入させていただいた想いを

しっかりと暮らしに活かそうと思います。