おいしさの向こうに、ご馳走様。時を越えて、暮らしの潤いを。千葉市「merci」に息づく「生きる姿勢」

 

『2階は畳敷きの純和風スペース。

 千葉公園をぐるっとした後、

 靴を脱いで畳で

 のんびりマクロビランチなんてのはどうでしょうか。』

 

Ben Ten mapのそんな言葉に導かれて。

 

 

「merci」

FB https://ja-jp.facebook.com/merci.mn26 

 

 

JR千葉駅東口の喧噪とは裏腹に、落ち着いた雰囲気の北口、弁天界隈。

夕刻、おいしそうな匂いを漂わせる路地を漫(そぞ)ろ歩いて、角のお店で購入した焼き鳥を自宅で頬張ったらとびきりおいしいことでしょう。そんな界隈の一角に、やはり昭和の空気感が仄香るカフェがあります。

 

引き戸のガラス窓越しに窺えるカウンター。

そこに佇む、自分だけのちょっと特別な時間・・・。

そっと、

「merci」さんの空間に入り込みます。

 

カウンター越しに立っていた店主の田村さんに、二階の和室へとご案内頂きます。

少し昔の、幅の狭い木造階段。その一歩一歩を踏みしめる感触。そしてぼうっと白熱灯の灯るランプシェード。どこか懐かしい感覚をやわらかに呼び覚ましてくれます。

 

Ben ten mapにもあるように、merciさんでは玄米ご飯や野菜をベースとした食事を味わうことができます。この日は玄米ご飯セットと酵素ジュースを戴いてみました。

ふっくらと炊きあがった玄米はもちろん、とろとろに柔らかくなったカブの味噌汁は、すっと身体に染み入るような滋味に満ちた味わいです。雑穀のハンバーグは軽やかな風味に醤油麹と大根おろしがうま味と清冽な味わいを添えます。サラダは瑞々しく、思わず頬張ってしまします。

 

野菜は横浜市を拠点に、自然栽培の野菜の宅配・を行う八百屋「野菜ミコト屋」など、幾つかの繋がりの中から仕入れられているそうです。バインダーに留められたミコト屋さんのレシピ集やコラムが自由に見られるように置いてありました。そこには、技術、栽培方法以上に大切にしていることとして、こう書かれていました。

 

『農家さんの野菜に対する想いや姿勢の部分です』

 

・・・おいしさの向こうへ、ご馳走様です。

 

食後には、リンゴ、キウイ、ミカンで作った酵素ジュースを。

トゥルンとした甘さが舌を撫で、爽やかな酸味がふっと過ぎゆきます。

少しずつ酵素ジュースを戴きながら、窓越しに道ゆく人たちを眺める・・・ここに住んではいないのに、僅かな時でも街と溶け込んだような感覚。この空間との一体感こそ、カフェの大きな魅力だと思うのです。

さて、そろそろ駅前の「豆nakano」さんのコーヒーを買いに行こうと1階へと階段を下ると、カウンターに一人の男性が座っていました。裏千葉にある「gallery takamine」の小野高峰さんです。実はmerciの改装には小野さんが関わられているそうなんです。壁塗りや三和土づくりなど、たいがいのところを田村さんが自ら(!)手がけられたそうですが、そのやり方のアドバイスや必要なモノの手配など、全体のコーディネーターとして高峰さんが入られていたそうです。

 

そんな高峰さん、古民家にもたいへん詳しく、

 

「古民家は確かに寒いんだけど、

 そうやって家が維持されてもいるんだよね。

 隙間風も湿気をなくすもの」

「囲炉裏の上にガラスを置いて使ってもいいよね」

 

・・・様々なことを教えていただけました。

ですが、最も強調されていたのは

 

「なぜそうなのか、ということ。

 家をもっと知って欲しい。

 もっと分かって家に住んで欲しいんです」

 

間取りなり、建具なり、家具なりが、そういうカタチでそういう配置でそういう佇まいなのにはすべて理由がある。その意味を読み解くこと。そこに暮らす知恵があると云います。

 

食の有り難さと暮らしの知恵。

地域と時を越えて囁いてくる「生きる姿勢」が、心地よく私の感性に響いてくるのです。